数字のマジック～その２～「偏差値」③（神戸市北区西鈴蘭台の塾・灘中学受験Academia） #中学受験 #偏差値 #偏差値表

神戸市北区西鈴蘭台の塾、中学受験・中高一貫校進学指導専門塾の灘中学受験Academiaです。前回の引きで「『偏差値』が何かもよくよく知らずに『偏差値が…』と言うこと自体に、『偏差値』を絶対視することの矛盾が隠れている」と書きましたが、今回はその辺を詳しく書いていきたいと思います。

「偏差値」とは、母集団（テストでいえば受験生全体のこと）の中で相対的にどの位置にいるかを示すものだということは既に書きましたね。母集団が同じであれば、異なるテスト間においても、相対的位置の上下で「成績≒学力」の上下を判断できるということです。逆に言えば、母集団が大きく異なる場合は、異なるテストの「偏差値」を比較したところで何も判断できないということになります。

「偏差値」を知らないんだなぁ、という例はいくつも見かけます。他のブログ等で「Ａ社模試の偏差値とＢ社模試の偏差値を比べてみた」なんていう記事をお見受けしますが「同じX中の偏差値がA社では68なのに、B社では72になっている。A社の方がより難関校向けの模試だと言える。」だからぁ～、母集団の違いなんだってば！もう「なんだかなぁ～」です。また、理系を標榜していたどっかの塾講師で、いくつかの大手模試の偏差値を平均して「独自」の偏差値表を作っていたのがいましたが、当然異なる母集団によるテストの「偏差値」を平均したところで、意味のある数字なんて出て来やしません。これのどこが理系やねん？その講師はその「偏差値表」を自慢気に保護者会で披露していました。それを感心して聞いている保護者も保護者ですが…これも立派な「数字のマジック」ですかね。

この理屈でいけば、ある模試において、過去の「偏差値」データを基準にして、今年のお子さんの「偏差値」から合格判定を出すこともおかしいことになります。だって、過去と今年では母集団は絶対異なるはずだから。では、どうやって合格判定するのか？模試会社は入試終了後から模試受験生の合否を追跡調査して、その年度の入試における合格ラインを割り出します。そこに、次年度の事情（入試要項の変更等）を加味して合格判定の数字を「推定」します。そこには、必ず「経験という人間の勘」が入っており、偏差値自体は絶対ではないのです。え、「人間の勘」？これって、「偏差値生みの親」のあのエピソードにあったような…だったら「偏差値」の意味無いじゃん！

実はそれどころではないのです。この合格判定向けの「偏差値」には「勘」だけではなく「忖度」が働いていることがあるのです。実際こんなことがありました。P塾主催の模試で、例年ならX中のA判定偏差値が70のところ、ある年はP塾生が好調で合格者が増え、生データではA判定偏差値が68になったそうです。そこで、P塾は次年度にX中のA判定偏差値を68と発表したところ、X中の先生が「それはウチが易しくなったということかい？」とそれとなく「クレーム」を入れてきました。

「X中の先生ともあろうものが偏差値のことも知らんのか？」という言葉を呑み込み「いえいえ、ウチの塾の生徒が頑張った結果でして…」と正論を伝えたP塾でしたが、その翌年から合格実績に関係なくA判定偏差値を70で固定してしまいました。「偏差値表で上位にいないと親御の評価が下がる」という学校と「X中のご機嫌を損ねたくない」という塾の、双方の思惑が一致した結果です。こんな「捏造」された数字を、アナタは何も考えずに信用するのですか？

「『偏差値』とは絶対信じられる数字ではなく、あくまでも参考にしかならないものである。」入試の成否を決めるのは、その時の合格最低点が取れるかどうかだけ。当たり前でしょ？「模試でA判定だったのに落ちた。どうしてくれるんだ！」と模試会社に抗議の電話を入れる人が毎年いるそうです。こんな数字のマジックにも気づけない親御さんでは、お子さんを「不合格」にしてしまうのも仕方がないでしょう。そうならないためにも、「偏差値」の真実をよく理解し、「親の中学受験『偏差値』」を高くしておくべきです。では、また。