東京の塾銀座・代々木の思い出③（神戸市北区西鈴蘭台の塾・灘中学受験Academia） #中学受験 #中学受験ブログ #代々木

神戸市北区西鈴蘭台の塾、中学受験・中高一貫校進学指導専門塾の灘中学受験Academiaです。前回、私（当塾教室長）と母親との「冷戦」というお話で終了しました。私の母親は会津の武家出身で、白虎隊の血筋をくむ人。「ならぬものはならぬ」「女子はこうあらねばならぬ」という考えが強く、なぎなたの道場に通っていた母親は「女も自分の力で生きろ」などといつも言っていました。「女子は先生に就職するのが良い」教員採用試験に合格した時は大喜び。でも…

両親の前で「教職にはつかない」と言うと父が「その理由は？」と聞いてきたので、フーコーの「言葉と物」という本を渡し「私は権力で子供を縛りたくない。権力の側に立ちたくない。」と言いました。しばらくして、父は「やりたいようにやったら」と。でも、母は「せっかく免許を取ったのに。安定した職につけるのに。」だいぶ説得したのですが、そこは会津武士の娘。頑固。父は国家権力に従わない、という人でした。戦争中の経験からでしょう。「国は信用できない」これが口癖でした。「まあ、やりたいのだったら」と、当時まだ社会的位置が低かった「塾講師」へと背中を押してくれました。でも、母はそれから約三カ月口をきいてくれませんでした。

代々木の町から始まった私の塾講師歴、ここからまだいろいろあるのですが、一つ言えることがあります。今のように「テストの点数が」とか「「テストによってクラスが」とか「あの先生が気に食わない」なんてことはありませんでした。講師と塾生と親御さんとの「信頼」の上で、塾も合格も成り立っていました。以前、久しぶりに代々木の町を訪れました。私を雇ってくれた塾は移転して、その跡地にはマンションが建っていました。

実は、その塾は「分裂」騒ぎを起こしたのです。私はその前に塾を移っていたので、詳しい経緯は後から聞きました。その当時は、塾の先生が塾生を引き抜いて自分の塾を立ち上げる、ということがかなりありました。絶対的な有力塾というのが少なく、まだまだ塾業界自体が群雄割拠の時代のこと。良くも悪くも「塾＝先生」という時代だったのです。「あの先生に教わりたくてその塾に行っただけであって、先生が移るのならついていく。」という考え方も確かにあったのです。引き抜かれる立場からはとんでもないことなのですが。

現在はこんな分裂騒ぎは少なくなりました。有力な個人塾が衰退し、企業化した大手塾が台頭してきたことがそれを物語っています。塾講師もすっかり「サラリーマン」化してしまい、独立しようなんて気概もほとんどありませんしね。「サラリーマン」講師はお子さんではなく「会社」（塾）の方に顔を向けながら指導します。「権力」側に立つことを嫌って塾講師になった私から見れば、塾講師が会社（塾）という「権力」におもねるようでは終わりだとしか思えません。分裂自体は決していいことではありませんが、塾選びの基準が「先生」ではなくて「塾名」になったことが大きな要因だと思います。私の代々木時代のような、講師と塾生と親御さんとの「信頼」なんていうのはもはや望むべくもない昔話なのでしょうか。では、また。