学びとは何か～30回目の「1.17」に想う～（神戸市北区の中学受験専門塾・灘中学受験Academia） #中学受験 #阪神淡路大震災 #塾

神戸市北区西鈴蘭台の塾、中学受験・中高一貫校進学指導専門塾の灘中学受験Academiaです。ちょっと前から「非認知能力」の指導について何件かお問い合わせをいただいています。自己肯定感・非認知能力についてお話を申し上げてきましたが、そのことについてもう少し突っ込んで入塾説明会で申し上げようと考えていたのですが、様々な教育的な事柄が見えてきましたのでもう少しお待ちください。さて、今日は阪神淡路大震災から29年、あの日から数えて30回目の「1.17」この年に生まれた赤ちゃんも今年29歳。その時、あなたは何をしていましたか？私（当塾教室長）？今回はそのことについて書いてみます。

私は「あの日」も兵庫県民でした。ただし、まだ被害の少なかった西播地区にいました。朝方ゴ――ッという不気味な地鳴りで目を覚まされたのを覚えています。まだ幼稚園にも行っていない息子を抱きしめたのを今でも覚えています。ただ、その後のやや激しい揺れのあとは、あまり余震もなく家族たちと「一瞬、すごく揺れたね」といって、呑気にまた寝たことも覚えています。家族がしばらくして「おい、起きろよ」といって私を起こしに来ました。仕事がたまたま休みだったので、テレビをつけたところ、あの「阪神高速倒壊」の様子がテレビに映っていると。そのやや後でしたか、家の電話が鳴り始めました。「大丈夫だったの！」関東の親戚から、また友人からの電話。みんな泣きながら「無事でよかった…」呑気だった私はその時初めて、この地震の凄さを、そして恐ろしさを感じたのでした。私の塾仲間も神戸に住んでいましたので慌てて連絡を取ろうとしたのですが、もちろん電話など通じません。かつて東京で一緒の塾に勤めていた仲間の一人はポートアイランドのマンションに住んでいたのですが、後に液状化現象で住まいを追われたことを知りました。

その内に「一応無事だったよ」という連絡を、神戸に住んでいる或る塾仲間からもらって「よかった。私にできることがあったら何でも言ってね」と告げていたところ、やがてそこから「おい、よかったら塾の仕事を手伝いに来てくれないか、子ども達がたくさんたくさん来るんだ。丸付けも間に合わないんだよ。」と声がかかりました。「でも、学校だってまだ始まってないんでしょ？」というと「でも来るんだ、どんどん。たのむ。丸付けにきてくれ。」おかしなものですよね。普段はあんなに「塾なんかメンド臭い」だの「今日は塾に行きたくないな」なんて言っていた子でも、この非常事態の中で塾が開いているとなるとやってくる。子どもによっては「教材もどこに行ったか分からない」と言う子もいたのですが、とにかく塾にやってくる。私は「わかった」と言って、子どもを連れてその神戸の塾に向かったのでした。丸付けのための赤ペンセット一式を持って。

その塾で何をしたかというと…徹底的に丸付けでした。一体どれだけのプリントや教材に向き合ったか、何百枚だったかもしれません。私の幼い子どもは、被災者であるはずのお兄さん・お姉さんたちにどれだけ可愛がってもらったことでしょう。丸付けと指導に明け暮れていた私の記憶は定かではありません。でもあの時、名前も知らないある女の子にこう言われたのを覚えています。「赤丸をありがとう」またやんちゃ風な男の子からは「わかんないとこを教えてくれておおきに」あの時ほど丸付けに夢中になったことはなかったかも、といえたその時の私は「こちらこそ」そう答えるのが精一杯だったような気がします。

あの時。多くのものを失っても、否、失ったからこそ、子どもたちも大人たちも、ただただ学べることに「ありがとう」と思えたあの時。そして今。再開発のビルが建つのと引き換えに、この29年で子どもたちとその親御が何を失ってしまったのか「わかんないから早く答を教えてよ」「塾に行くよりゲームしていたいな」「そんなのタブレットで調べたらいいじゃん。辞書引くなんてメンドクサイ」「もっと楽に合格する方法をさっさと教えてよ」学びとは何か、あらためて問い直してみたい30回目の「1.17」を迎えます。では、また。