その「英語入試」本当に大丈夫？④（神戸市北区西鈴蘭台の塾・灘中学受験Academia） #中学入試 #英語入試 #グローバル社会

神戸市北区西鈴蘭台の塾、中学受験・中高一貫校進学指導専門塾の灘中学受験Academiaです。中学入試での「英語入試」について話を進めてきました。今回は、東西の私立中の現状について書いていきます。

その良し悪しはともかく、中学受験の世界でも、新しい流れは首都圏から始まり、しばらくして関西にも波及していきます。アラカルト入試も午後入試もそうでした。関西ではまだまだ緒に就いたばかりという印象の「英語入試」ですが、首都圏では2019年入試において実に125校が実施しています。どのような生徒を募集するかによって、要求される英語レベルにも幅があります。一般的には英検3級程度というのが多いようですが、上位校では英検2級～準1級程度の試験を行うとしている学校も。そういう学校では、帰国生枠からこぼれた子や幼少期から英語教育を受けてきた子をターゲットにしているそうです。

慶応湘南藤沢中等部も「算国＋英」の3科入試を実施。系列小では既に英語を学んでいることも影響しています。全国でもトップの私学である早慶が「英語入試」に舵を切れば、MARCH以下追随する学校は増えていくものと予想されています。そうなれば、遠からず関西の関関同立等の附属校にも波及していくことでしょう。そして、関関同立が動けば附属校以外の私立も一気に動く可能性は大いにあります。最上位校を除いて。

その最上位校ですが、「検討中」としているところもあるものの、基本「今のところ英語入試は考えていない」というスタンスのようです。その理由がいくつか挙げられています。

・小学校の英語教育は、地域や学校で差が大きい。

・算国理社に続き英語を入れると、受験生の負担が大きくなり過ぎるおそれがある。

・評価方法等、入試として導入することに慎重さを要する。

・英語を入れることで、他教科に優れた生徒が入学できなくなるのを避けたい。

一方、導入に前向きなサイドからはこのような声も。

・「英語1教科入試」のハードルが高ければ、従来の入試でクリアすればいいだけ。

・大学入試改革でも求められる「多様化」は中学入試でも必要になる。

・英語も正式に教科化されて算国と同様に成績がつくようになるのだから、当然入試科目として認めるべき。

関西に目を移すと、今春東大合格者数42名を誇る西大和学園中が、本校だけでなく東京会場等でも「英語重視型入試」を「帰国生入試」とは別に実施しています。2019年度の「英語重視型入試」はA、Bと2つに分かれていて、Aは算国各150点＋英語（筆記試験100点、エッセイ70点、面接30点）、Bは算国各150点、日本語による面接に英検資格による加点（2級50点、準1級75点、1級100点）という入試。関西でも屈指の進学校である同校がこのような「英語入試」を行うことは注目に値することです。

一方、このような動きが「英語ができる子の青田買い」ではないかと懸念する声もあります。大学入試でも有利に働くであろう、英語に力を注ぐことができる一部の限られた生徒を囲い込むことで、国公立大の推薦入試等の実績も稼げるという目論見が透けて見えるのだと。更に穿った見方では、グローバル社会で利潤を上げるための人材を育成するよう政財界からの強い要請があるための「英語重視」なのだとする向きも。

政財界の中には「グローバル社会で生き残るために、いっそのこと英語を公用語にしてはどうか。」という極端な意見まで出ているようです。実際、そんな会社も出てきていますしね。でも、そんな政財界の上の人達ってそもそも「グローバル人材」なんでしょうか？「グローバル人材」を正しく評価できる人達なんでしょうか？「英語ができる」ことが、学校や会社の実績を上げることだけに消費されるのだとしたら…

周囲の環境が英語100％ならばいざ知らず、母国語が日本語である人にとっては「英語ができれば国語なんてどうでもいい」はずなどあり得ないでしょう。母国語での文の読み書きにも支障があるのに、どうやって英語で正しく理解や表現ができるのでしょう。理想を語るのは多いに結構ですが、現実的に物事を判断するだけの「思考力」も新学力観の1つだと思うのですがね。では、また。