明治の文豪も闘ったグローバリズム（神戸市北区西鈴蘭台の塾・灘中学受験Academia） #中学受験 #中学受験ブログ #夏目漱石 #正岡子規

神戸市北区西鈴蘭台の塾、中学受験・中高一貫校進学指導専門塾の灘中学受験Academiaです。今回は、途中になっていた「明治の文豪」のお話をしたいと思います。

第100回全国高校野球選手権大会が盛り上がりの中で終了しました。私（当塾教室長）は、実は大の高校野球ファン。今年の「レジェンド始球式」の面々を懐かしい気持ちで見ていました。野球といえば正岡子規を思い出します。自分の本名が「のぼる」なので、「の・ぼーる」＝「野球」を雅号にした、とも伝えられています。正岡子規は松山出身ですが、東京に上京して夏目漱石と大学予備門で同級生となり、漱石が松山に英語教師として赴任していた頃に、少しの間一緒に住んでいたこともあります。今回は、夏目漱石と「明治時代の第一次グローバル期」について大学入試改革も絡めて、お話ししたいと思います。

夏目漱石、実は当塾代表の母校である灘中・高等学校とも関わりが少しあるのです。灘中高を創立したのは酒どころ「灘五郷」の酒造家嘉納家・山邑家。昭和２年のころです。この時、嘉納家の親戚で当時東京高等師範学校、今の筑波大学の校長兼講道館館長だった嘉納治五郎氏を顧問に迎えたのです。この嘉納治五郎氏が校長を務めていた東京高等師範学校に、東京帝国大学英文科の、それも英文科創設以来二人目の卒業生であった、いわば超エリートの漱石が招聘されました。漱石が「私の個人主義」という講演の中で、その辺りの詳細を語っています。

さて、その夏目漱石ですが、ロンドンに２年間留学していました。文部省からの辞令で「派遣留学生として英語教授法を研究して、国へ貢献しなさい」と相成りました。１９００年、明治33年のことです。同時に「英文学研究」も漱石は研究課題にしたのですが…大英帝国で受けたカルチャーショック、そして思うように進まない研究。漱石はだんだん追い詰められていきます。「自分がイギリス人でない以上、英文学を理解し、伝えることはできないのではないか」とひどく悩んだ末、やがてある結論に至ります。「風俗・習慣・人情が異なるなら、国民性も異なるのだ」そして「西洋の真似ではなく、英文学の真似ではなく、日本の、もっと言ったら自分の世界、日本文学の世界をつくればよい」「西洋人がいくらこれは素晴らしいと言っても、自分が本心からそう思わなければ違うと言おう」

漱石の帰国は1903年。そして帰国後、小説を書き始めます。英文学をただ「輸入」したところで或る意味「国家」のためにはならない、ましてや自分のためにも、そしてこれからの「日本」のためにも。自力で作り上げていくしかない。漱石はこの時、まさに「日本文学のモノづくり」を決意したのです。ある意味「グローバルリーダー」の視点です。そして「日本近代文学の父」となるのです。

すごく乱暴に漱石のロンドン生活を紹介してしまったのですが、下宿に引きこもり、食費を切り詰めて500冊以上の本を読んでいたようです。美術館等に出かけることはあっても、そこでの「西洋人たちの目」も気になったようです。当時、日本人が公共の場に来ること自体珍しかったのでしょう。好奇の目でじろじろ見られたようです。無理をして「西洋」に、「外国」に合わせることはないのだ。違うことは違うと言おう。でも、そのためには「自国の」オリジナリティーや「自論」を求められる。それこそを追求しよう。

エリートと呼ばれた漱石ですら、このように苦労を重ねボロボロになりながら、ようやくこの境地に辿り着いたのです。それは「自分自身を掘り下げる」ことに他ならないのです。正解のない問題に対して、自らが信じるに足るだけの、何らかの結論を得られるまで考え抜く。今から100年以上前のことですが、現代の「グローバル化」そして大学入試制度改革の先に見える課題とちっとも変わらないのではないでしょうか。ね、漱石先生。今の日本を見て先生はどう思われるのでしょうか。「吾輩は猫である」とまた皮肉を仰るのでしょうか。次は「森鷗外」についてお話ししようと思います。では、また。